2017年ターム3も始まり、慌ただしい毎日が戻ってきましたね。
今回は僕が美術を子供に教えていて、よく質問される「子供が黒を使うのが心配で,,,」ということについて書いてみようと思います。
以下3つ視点から「子供にとっての黒」を分析します。
- 子供の目や脳の機能
- 子供の好みの色
- 黒を使う意味
出落ちみたいになってしまいますが、子供は”黒”が好きなんです。 精神的に不安を抱えているから、黒を、黒い色を使う、、、といった認識は、フライングな場合がほとんどです。 では、以下にそのことについて書いてみましょう。
子供の目や脳の機能
新生児や10歳未満までの子供の”視力”や”色識別”について様々な研究がありますが、大人と子供のそれらの能力は非常に異なります。
大人には見えていて、子供には見えていない色(正確には、はっきりと識別できていない色)というのは存在します。それは、中間色と言われる色で、パステル調の黄緑や青紫といった淡い色。
子供に見えている色(見やすい色)は、赤・黄・青(三原色)や緑などのはっきりした色なんです。
生後4ヶ月くらいの赤ちゃんは、赤・黄・青・緑などのはっきりした色を識別できるようになると言われています。
ただし、生後4ヶ月はもちろんのこと、年齢の低い子供たちは”見えている色”と”色の名前”が一致しないことが多く、それが大人を不安にさせている原因でもあります。
例えば、紫を青といったり、赤をオレンジなど。赤を青と言うような間違いをすることもありますが、名前が一致していない場合が多いので、それをすぐに”色覚の異常”と繋げないほうがいいかと思います。
僕の経験からも「色の名前の不一致」は多く見受けられます。
ここオーストラリアで育った多文化背景を持つ子供たちや、二ヶ国語以上を話す子供たちは、この「色の名前の不一致」は頻繁に起こるように感じます。
だって、赤がRedで黄色がYellowというように、一つの色で2つの名前を覚えないといけませんからね。
子供たちが「子供が黒を使うから心配」というのは、大人の目であり物の見方なんです。
子供の好みの色
これは「子供の目や脳の機能」とも通じる話しで、多くの子供たちは”はっきりした色”を好む傾向があります。また”黒”もそのうちの一つというのを忘れてはいけません。
それに加えて文化背景や「男の子は青、女の子は赤やピンク」といった社会的観念といった影響もあるのです。
純粋な子供だからこそ、そいうった影響を受けやすいのだと思います。
結論から言えば、子供にとって”黒などのはっきりした色”は”わかりやすい色”であり”好きな色”なんです。
6ヶ月までの新生児向けに、白黒の絵本もあります。
加えて”黒”が”不吉な色”というのは、文化ごとに異なる認識であり、日本で必ずしも黒が不吉をあらわすものではない地域もあります。
加えて、男女でも”色識別能力”に違いがあります。
統計的には女性の方がこの能力は高いです。
大人の色についてのイメージや認識を、そのまま子供の行動に反映させてしまうことが必ずしも良い結果に繋がるとは限りません。
黒を使う意味
この記事の本題ですが「子供が黒を使うから心配で,,,」は都市伝説に近いと僕は思っています。
子供は欲求に素直であり、使い時に使いたい物を手に取るのです。
それが”黒”であった場合、大人はあれこれと考えてしまいます。
子供の目と色認識の能力を知って、不安を解消できるといいですね。
ただ、小学校高学年でも色の識別が難しいようであれば、一度専門家に相談したほうが良いかと思います。
最後に、僕の芸大の知り合いは色覚異常を持っていましたが”自分が見える色”を赤、青、黄そして緑と一般の人が見える色の名前と一致させて、自分の色覚のすり合わせをしていました。
本人のたゆまぬ努力の賜物ですが、彼が描く絵はとても素敵な色の世界を作っていました。
まとめ
子供たちが、黒や黒い色を使っていたら、さり気なく明るい色を勧めてみるくらいでいいと思います。
年齢が高くなれば、自然と他の色を使うようになります。